
誘拐 (ちくま文庫)
本田靖春
東京創元社 / 2000-07-21
この本について
仕事でも生活でも、いま目の前の人や土地の空気が「なぜこうなっているのか」がつかめず、説明できないままモヤモヤを抱えることがよくあります。相手の言葉の奥にある背景や、時代の流れがどう人を動かしているかが分からないと、自分の判断にも自信が持てなくなるんですよね。 『誘拐』を読んでいて感じるのは、事件そのものよりも、そこに関わる人たちの生活の匂いや、時代の地層が静かに立ち上がってくるところです。夜泣きそばの売子、疎開で流れてきた家族、草履を編ぐ父親、出稼ぎ農民がオリンピック工事を支えていた事実――抜粋にも残されている細部が、人の行動を決めていく“背景”を、説明抜きで実感させてくれます。犯人の借金を払って歩く姿にしても、一つの行動の裏にどれだけの積み重ねがあるかが、淡々とした筆致のまま立ち上がってきます。 自分が誰かを理解できないときや、社会の変化に置いていかれるような感覚があるとき、この本は「一人の人生は、その時代の色で染まる」という当たり前のようで見落としがちな視点を戻してくれます。事件ノンフィクションを読みながら、なぜか自分の周囲を見る目が少し柔らかくなる一冊です。人の行動の“理由”を急いで決めつけたくない人に、特に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの59%が集中しています。
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