
死者の奢り・飼育(新潮文庫)
大江 健三郎
新潮社 / 1959-09-29
この本について
日常を過ごしていると、ふと「自分がどこまで他人と混じり合えるのか」とか、「ここにいる自分は本物なのか」といった、説明しづらい不安が出てくることがあります。正面から言語化するほどでもないけれど、体の奥に残るざらつきだけは消えない。読者がこの本から抜き出していた場面を見ていると、その感覚に近いものを抱えているのだと思いました。 大江健三郎の『死者の奢り・飼育』は、そういう曖昧な不安を、きれいごとにせず、生々しいまま差し出してきます。人物同士の距離が急にねじれたり、優しさと残酷さが一つの行動に同居していたり、立場の違いで突然関係が反転したりする。その瞬間に立ち会うことで、「自分の中にもこういう揺れがある」と静かに気づかされます。読者が保存していた箇所の多くが、まさにその“揺れ”の瞬間でした。 この作品の効き方は派手ではありませんが、他人との関係の中で感じる罪悪感とか、優越と劣等が混じり合う感触とか、説明しづらい心の動きに名前をつけてくれるところがあります。しんどい関係性の中にも、なぜか少しだけ他者に触れたい気持ちが残る、その複雑さを否定しないのが救いでした。刺さる人は限られると思いますが、「人とかかわるたびに揺さぶられてしまう人」には深く響くはずです。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの28%が集中しています。
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