
害虫の誕生 ――虫からみた日本史 (ちくま新書)
瀬戸口明久
筑摩書房 / 20250612
この本について
日々仕事をしていると、「当たり前だと思ってる前提、ほんとうにそうだっけ?」みたいな気持ちにふと立ち止まることがあります。正しいと思って続けている習慣も、環境が変われば評価がひっくり返ることだってある。そう分かっていても、自分の見ている世界がどれだけ“歴史的に特殊”なのかまでは、なかなか想像できません。 『害虫の誕生』を読むと、その感覚がじわっと揺さぶられます。たとえば、あのゴキブリが豊かさの象徴だった時代があったとか、そもそも「害虫」という言葉自体が近代になってから生まれたものだとか。読みながら、自分の「これは当然こういう存在」という決めつけがどれだけ環境依存なのかに気づかされます。また、江戸の農民が虫害を“天災”として受け止めていたことや、明治の農学教育がどんなふうに西洋科学を取り入れていったかなど、人間の側の戸惑いや試行錯誤が丁寧に描かれていて、単なる虫の本ではなく「人間の認識の揺らぎ」の本でもあるんだなと思いました。 自分の思考の前提を見直したい人や、「なぜこの価値観になったんだろう」と立ち止まるクセのある人にはかなり刺さるはずです。自然の話を読んでいるのに、人間の視野がひらくような不思議な読後感があります。
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