
街道をゆく24
司馬遼太郎
株式会社朝日新聞出版
この本について
仕事の判断や生活の選択で、「自分の足元の感覚が薄くなってきたな」と感じるときがあります。知識は増えているはずなのに、目の前の世界の重さや歴史の厚みをつかみ損ねているような、そんな落ち着かない感じです。最近、自分もそういうモードに入っていたので、久しぶりに司馬遼太郎の『街道をゆく』を手に取りました。 この巻で描かれるのは、奈良や近江の風景に潜む時間の積み重なりです。たとえば、興福寺が明治の廃仏毀釈でほとんど壊され、五重塔が二十五円で売りに出された話。国家の制度や土木の力が悪いのではなく、そこに宿るはずの哲学が足りていなかった、という指摘に少し胸が冷えます。いまの私たちが直面している問題も、形だけの仕組みに頼りすぎている点ではあまり変わらないのかもしれません。また、琵琶湖の赤潮の記述や、氷魚を献上していた古代の暮らしなど、環境や生活の変化を淡々と辿る部分は、日々の判断に「どの時間軸で物を見るか」という視点を戻してくれます。 読みながら、歴史の知識が増えるというより、自分の感覚が少しずつ整っていく感じがありました。遠い昔の話なのに、知らないうちに現在の心の癖や迷いを照らしてくれる。不思議ですが、それがこのシリーズのいちばんの効き目です。 特に、「自分の判断基準がぶれてきた気がする」と感じている人には静かに刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
読書の順序
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