
複眼の映像 私と黒澤明 (文春文庫)
橋本 忍
文藝春秋 / 2010-03-10
この本について
仕事でも創作でも、手を動かす前に「全体を見通せていない気がする」「もっと準備しないとダメなんじゃないか」と足が止まることがよくあります。私も同じで、先のことを考えすぎて一文字も書けない日が続くことがあります。でも、この本に出てくる黒澤明や脚本家たちの姿勢に触れると、その迷いの輪郭が少し変わってきました。 何より大きかったのは、天才でないからこそ「最初から全体なんて見えるはずがない」と言い切る姿です。先読みしようと顔を上げるほど息が切れる、だから目の前の一歩だけを進めばいい、という考え方は、私のように準備で固まりがちな人間には妙にしっくりきました。それに、通勤の車内で書き上げたという話も、「場所や環境が整ったら始めよう」と言い訳していた自分を静かに刺してきます。 もうひとつ印象に残ったのは、作品の“骨格”をどう扱うかの揺れです。徹底的に準備する派と、いきなり書き始める派。そのぶつかり合いが生々しく記録されていて、自分が何かをつくるときも「どこまで決めて、どこから手探りにするか」を考えるヒントになります。完成品の裏側で、血のにじむような試行錯誤がどんなふうに積み上がっているのかが、そのまま見える感覚でした。 自分の仕事が形にならないと焦る人、準備か実践かでいつも迷ってしまう人には、特に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
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