
血別: 山口組百年の孤独
太田守正
サイゾー / 20150727
この本について
人間関係で「腹を決めている人」と「どこか様子をうかがっている人」の差に、なんとなく気づいてしまう時があります。仕事でも、立ち位置を曖昧にしたまま場当たり的に動く人を見ると、こちらまで落ち着かなくなる。それでも、じゃあ自分はどうなんだと言われると、自信を持って答えられない。そんなモヤモヤを抱える瞬間ってあります。 『血別』を読んで面白いのは、任侠の世界という極端な舞台を通して、覚悟とか信用とか、ふだん名前をつけにくい感覚がむしろくっきり浮かび上がるところです。抜粋にある「蝙蝠のように振る舞い〜」という一文はまさにそれで、どの世界にも境界線に立ち続ける人がいて、その行動が周囲の判断をどれほど鈍らせるかが妙にリアルに描かれています。もう一つ、噂や風評をめぐるエピソードも刺さる部分で、責任の所在が曖昧になると、人はこんなふうに揺れるのか、と自分の仕事場にも思い当たるところが出てきます。クラウゼヴィッツの引用も唐突に見えて、実は「論理だけでは割り切れない現場の流れ」を示すために効いている。 任侠の歴史を知るためというより、人の立ち振る舞いがどう信用になるのかを、少し距離を置きながら観察したい人に向いている本です。私自身、きれいごとでは収まらない判断を迫られた時、この本の描写が後ろから静かに押してくれる感じがありました。こんな視点がほしい人には、たぶんすっと入ってきます。
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