
不協和音 京都、刑事と検事の事件手帳 (PHP文芸文庫)
大門 剛明
PHP研究所 / 2016-03-07
この本について
人と話していて、ちょっとした一言に妙な温度差を感じることってありませんか。相手は軽く言ったつもりでも、こちらには刺さったり、逆にこちらの正しさが伝わらなくて空回りしたり。あの微妙なズレが積み重なると、何が正しいのかより「どう向き合うか」が分からなくなってきます。 この作品で印象的なのは、読者の方が保存されていた「馬鹿にしたような笑い」の場面に象徴される、人と人の価値観の衝突です。刑事と検事という立場の違う二人が、同じ事件を前にしながら、見ているものも、信じている筋もまったく揃わない。その不一致がただの対立として描かれるのではなく、読み進めるほどに「正しさの幅」を考えさせられます。正論で押しても人は動かないし、正義のために動いても誰かを傷つけてしまう。そんな現場の空気が、決めつけをせずに伝わってきます。 特に、相手の態度にモヤッとしやすい人や、仕事で異なる価値観の相手と組まざるを得ない状況にいる人には、静かに効いてきます。事件ものとしても読めますが、それ以上に「どう折り合いをつけて関わるか」を考えるきっかけになる一冊だと思います。
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