
なぎさ (角川文庫)
山本 文緒
KADOKAWA / 2023-02
この本について
忙しいわけでもないのに、気持ちだけがずっと落ち着かない時ってありませんか。早く答えを出したいのに決められない、でも流されるのも違う気がする。家族との距離感や、人との別れ、飽きやすい自分への嫌悪…。言葉にしにくい揺れが続くと、どこに立っているのかすら分からなくなります。 『なぎさ』は、その揺れを無理に止めようとしません。むしろ、登場人物たちがそれぞれの「やり過ごし方」を見せてくれるような小説です。力まなくていいと言ってくれる大人の声に救われたり、飽きることを恐れなくていいという視点にハッとしたり、故郷から離れる決断の重さに自分の過去が勝手にざわついたり。読者が抜粋を残す場面を見ると、みんな「変わりたいのに変われない時の自分」をどこかで重ねているように感じます。 特に効くのは、自分の感情の変化を悪いことだと決めつけなくなるところです。続けられない自分に落ち込むより、「人の気持ちは動くもの」と受け入れるほうが、次の選択肢が見えてくる。あるいは、家族や地元との距離の取り方に悩んでいる人には、「無理に剝がさなくていい」という優しい視点がそのまま救急箱になると思います。小さな行動の手前にある気持ちを、丁寧に扱ってくれる物語です。 自分に厳しすぎて息が詰まっている人、あるいは過去との距離がうまく取れない人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの44%が集中しています。
読書の順序
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