
みかづき (集英社文芸単行本)
森絵都
集英社 / 2018-11-25
この本について
仕事でも家庭でも、「自分の選んでいるものは正しいんだろうか」と立ち止まる瞬間ってありますよね。誰かを助けたいと思いながら、何が正解なのかはいつも霧の中。教育の話題になると特にそうで、制度や“正義”が揺れ動くたびに、自分まで流されそうになることがあります。 『みかづき』を読んで感じたのは、その揺らぎごと生きていく人たちの姿が、とても現実的に描かれていることでした。たとえば、老人の見守りを弁当に組みこむ場面は、教育とは関係なさそうでいて、人に関わることの本質を静かに突いてきます。知識は奪われない、と言い切る場面もあって、時代や制度が変わっても、人が自分の頭で考える力だけは残るんだと、少し呼吸が楽になりました。ゆとり教育の議論や塾の蜂起のくだりも、誰かが悪いではなく、誰もが迷いながら手探りで動いていたんだとわかる描かれ方で、当時の空気を知らなくても妙に身に覚えがあるんですよね。 読みながら何度も思ったのは、「満ちていないからこそ進める」という姿勢です。教育者たちが試行錯誤を重ねるのと同じように、私たち自身も欠けたままやっていくしかない。その“欠け”を責めないでいい、という感覚がこの物語にはあります。 人に関わる仕事をしていて、正解のない迷いを抱えがちな人には、静かに届く一冊だと思います。
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ハイライト密度
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