
カフカ短篇集 (岩波文庫)
池内 紀
千歳出版 / 1987-01
この本について
日々、判断に迷ったり、気づけば自分の感情の正体がわからなくなっていたりしませんか。理不尽と言い切れないけれど、どうにも飲み込めない出来事が積み重なると、心のどこかにざらつきが残ります。自分の中の「説明できない部分」をどう扱えばいいのか、僕もよく立ち止まってしまいます。 『カフカ短篇集』を読むと、そのざらつきが少しだけ形を持ちはじめます。たとえば、突然毛布をはねのけて立ち上がる父親のように、筋道では説明できない飛躍が、なぜか自分の感情にも思い当たったりします。あるいは、工場のしくみを誰も把握できていないまま仕事だけが続いていく描写を読むと、「状況が意味不明なのに動かされてしまう感覚」って、自分の生活にもあるよなと気づきます。万里の長城が何のために作られたのか誰もはっきり知らない、そんな世界のほうがむしろ正確なのかもしれない、とさえ思わされます。 カフカの短篇は問題を解決してくれるわけではないけれど、説明のつかないことが多い世界で、自分の違和感を「間違いじゃない」と受け取れる余白をくれます。読んでいるうちに、やたらと合理化しようとする自分が少しおさまり、曖昧なままの感情を抱えて立ち返る場所ができる感じです。理屈よりも、今の自分の感覚を確認したい人に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
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