
辞書になった男 ケンボー先生と山田先生 (文春文庫)
佐々木健一
文藝春秋 / 2016-08-04
この本について
仕事でも日常でも、言葉の選び方ひとつで「伝わった/伝わらない」が分かれるのに、その差がどこから生まれるのかは案外よく分からないままです。辞書を引けば答えがあるはずなのに、辞書そのものをつくる人のことはほとんど知らない。この本を読んで、そんな小さなモヤモヤが少しほどけました。 『新明解国語辞典』の語釈に惹かれる理由は、ただ個性的だからではなく、そこに“毀誉相半ばする”ほどの葛藤や、二人の編者の人生観が刻まれていたからだと知れます。初刊を受け継ぎながら構想を変えていく山田先生、その背後にある見坊先生の大きな足跡。二人が互いの視点をぶつけ合い、ことばを研ぎ澄ましていく過程を追うと、普段何気なく使っている日本語が、実は思考そのものをつくっていることに気づかされます。 特に刺さったのは、「語釈とは結局、世界の見方そのものなんだな」と腹に落ちる瞬間がいくつもあることです。誰かの定義に触れることで、自分の中の曖昧さが少し輪郭を持つ。読書・恋愛・世間知など、日常ど真ん中の言葉がここまで深く掘られていたのか、と驚きながら読み進めていました。 ことばに振り回されがちな人、あるいは辞書をただの道具以上のものとして見てみたい人には特に響く一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの39%が集中しています。
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