
ディスカヴァー文庫 滔々と紅 (本のサナギ賞受賞作)
志坂圭
ディスカヴァー・トゥエンティワン / 2017-02-24
この本について
ときどき、自分がいる場所にしっくり馴染めない感覚が続くことがあります。人間関係は悪くないし、大きな不満があるわけでもないのに、なぜか息苦しい。環境に合わせているうちに、どこかで自分の輪郭が曖昧になっていくようなあの感じです。 『滔々と紅』を読んで驚いたのは、この“居場所の違和感”が、江戸の吉原というまったく別世界の話なのに、不思議といまの自分に刺さってくることでした。閉ざされた環境で生きる人が、外の世界を知らないまま順応していく過程や、そこから少しでも外れたときに押し寄せる罪悪感。その描写が、生きる時代が違っても、人の不安や孤独はそう変わらないんだと静かに教えてくれます。 とくに、外の世界に馴染めないように“整えられる”感覚や、選べない境遇の差が一本の桜で象徴される場面は、環境に流されがちな自分の心の動きを見つめ直すきっかけになりました。過酷な舞台設定ではありますが、人の営みを丁寧に追う物語だからこそ、誰かの人生を想像する余白が生まれ、自分の立っている場所を少し離れて見ることができる本です。 いまの環境にどこか馴染めなさを抱えつつも、なんとか日々を続けている人に、静かに染みる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの60%が集中しています。
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