
西郷隆盛 新装版 (角川文庫)
池波 正太郎
KADOKAWA / 2017-07-25
この本について
仕事でも人間関係でも、「この人についていきたい」と思える相手に出会えず、どこか宙ぶらりんのまま動いているような時があります。正しいと思っていた判断が、怒りや焦りが混じるとすぐ揺らいで、自分でも自分が信用できなくなる瞬間もあります。そんな迷いの最中で池波版の西郷を読むと、歴史の人物というより、“生身の先輩の仕事姿”をのぞき見しているような感覚がありました。 たとえば、西郷が斉彬に出会ったときの「この人のために働きぬこう」という熱が数日眠れないほどだった話は、自分がいま誰に心を預けて動いているのかを問われるような場面です。奄美で自分の扶持米をほぼ全て島民にまわしたエピソードも、きれいごとではなく、現場で何を優先するかの判断基準がにじんでいて、読みながら背筋が伸びました。さらに、会議にぎりめしを持参して、維新で死んだ人々への記憶を手放さない姿は、成果や待遇に引っぱられがちな今の働き方を一度立ち止まらせてくれます。 池波正太郎は西郷を神格化せず、野性味や未熟さまで書き込むので、こちらの迷いや弱さも否定されないまま読めるのが救いです。歴史の大きな決断も、結局は日々の姿勢の延長にあるんだなと、少し地に足がつく感覚がありました。 自分の基準が揺れがちな人、誰にも言えないまま迷いを抱えている人には、じんわり効く一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの36%が集中しています。
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