
この本について
仕事でも人生でも、ふと「もしあのとき別の選択をしていたら」と考えて動けなくなることがあります。過ぎたことを考えても意味がないと頭ではわかっていても、心がついてこない。そんなときに、この『最後の証人』のような物語がじわっと効いてきます。 読者の方が保存していた「選ばなかったもうひとつの人生に嫉妬して生きていく」という一文は、この作品の静かな核心だと思います。登場人物たちが自分の選択と向き合う姿を追っていると、「嫉妬してしまう自分」もまた人として自然なんだと受け止められるようになります。それは逃げではなく、立ちすくんでいた気持ちが少しほぐれるような読後感です。 また、佐方貞人の姿勢がいい意味で現実的で、正義を振りかざすでもなく、淡々と事実を見つめようとするところが、自分の迷い方と重なる瞬間があります。自分の判断に納得できないときでも、「それでも前に進むしかないよな」と背中を押してくれる感覚があります。派手さはないのに、あとからじわじわ効いてくるタイプの物語です。 選ばなかった道を引きずってしまう人、あるいは正しさよりも「どう折り合いをつけるか」で悩みがちな人に、静かに刺さる一冊だと思います。
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