
盤上の向日葵(上) (中公文庫)
柚月裕子
この本について
人間関係で「距離を置きたい相手ほど、心のどこかで切れずに残ってしまう」という感覚、けっこうしんどくないですか。特に親子となると、関わりたくないのに、無関係ではいられない。その矛盾を抱えたまま生活している人、多いと思います。僕もそういうグレーを抱えている側です。 『盤上の向日葵(上)』は、事件を追う刑事たちの物語でありつつ、父との関係に揺れる桂介の姿がずっと胸に残ります。ろくでもない父親なのに、失った母の代わりに唯一のつながりになってしまう葛藤とか、名前を呼ばれただけで昔の記憶がざわつく感じとか、ああいう“切り離せなさ”の描き方がとてもリアルなんですよね。そして刑事たちの「諦めの悪さ」の会話も、事件の話というより、人として何かを追い続けるときの姿勢を見せられているようで、読んでいて背筋が伸びるような感覚がありました。 この本が効いてくるのは、過去との距離の取り方に迷っているときとか、自分がなぜあの出来事を今でも引きずっているのか整理できないときです。物語として面白いのはもちろんですが、登場人物の行動や迷いをたどっていくうちに、自分の中の“説明しづらい感情”が形になっていく感じがありました。 家族との距離感に答えが出せないまま大人になった人に、特に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの40%が集中しています。
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