
検事の本懐 「佐方貞人」シリーズ (角川文庫)
柚月裕子
この本について
仕事でも家庭でも、何か大きな問題に向き合うときって、つい全体を一気に把握しようとして固まってしまうことがあります。頭では「落ち着け」と思っても、現実のほうが先に迫ってきて、胸をぎゅっと掴まれるような感覚になる。あの感じ、けっこう多くの人が抱えているんじゃないでしょうか。 『検事の本懐』を読んでいて、読者の方が保存していた場面には、まさにその“息が詰まる瞬間”が切り取られていました。娘に何かあったと気づいた母の反応とか、突然日常が反転する場面。ああいう描写って、フィクションなのに自分の経験と地続きでつながるんですよね。その上で、「樹海ではなく樹を見る」という佐方の言葉が効いてくる。状況に呑まれそうになっても、一つずつ確かめることでしか前に進めない、という当たり前だけど忘れがちな視点を落ち着いた筆致で示してくれます。 派手な逆転劇があるわけではないのに、読み終えると、自分の抱えている問題も“全体像で焦らなくていいのかもしれない”と少し思える。登場人物の揺れ方がリアルだから、こちらの心拍もちゃんと落ち着いていく感じがあるんです。大事なのに見落としていた一点を拾い直す、そんな読後感でした。 こんな人に刺さると思います。状況に押しつぶされそうなときほど、足元の「一本の樹」を見直したい人。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
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