
数学する身体(新潮文庫)
森田真生
ミシマ社 / 20190320
この本について
忙しい日でも、頭の中だけで考えごとを続けていると、だんだん視野が狭くなっていく感じがしませんか。机に向かっているのに答えが出ず、散歩に出た瞬間ふと腑に落ちる、みたいなあの現象。自分でも説明しにくいけれど、「考えるってなんなんだろう」と立ち止まってしまう人は多いと思います。 『数学する身体』は、そんなモヤモヤに少し風を通してくれる本でした。思考と行為がきっぱり分かれているわけではなく、身体の動きがそのまま思考の一部になっている、という視点を丁寧に描いてくれます。数学の話が中心にありつつも、抽象や形式だけで世界を理解しようとするやり方に限界を感じたとき、「身体に戻る」という選択肢がどれだけ豊かなものかを思い出させてくれるんです。岡潔の「上空移行」の話も、理屈を積み上げるだけではなく、次元をひとつ飛び越えてみるような大胆さが、人間の思考には確かにあるよな、と背中を押されました。 読みながら、自分も数字を扱うときに自然と空間のイメージに寄りかかっていることに気づいたり、心が脳の中だけにあるわけではないという考えに、妙なリアリティを感じました。理屈に詰まったときほど、身体や環境に頼ることを忘れていたなと反省もします。 「考えることに行き詰まったとき、別の入口がほしい人」にとくに刺さる本だと思います。抽象の世界を扱いながら、私たちの現実の感覚に静かに寄り添ってくれる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの30%が集中しています。
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