
最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常―(新潮文庫)
二宮敦人
新潮社 / 2016-09
この本について
仕事でも趣味でも、「好きでやってるはずなのに、なぜか思うように進まない」と感じる時があります。頑張っているのに応えてくれない気がしたり、そもそも自分は何に向いているのかよく分からなくなったり。私もそんな時期にこの本を読んだのですが、藝大の学生たちの姿を覗くことで、自分の迷いの輪郭が少しだけはっきりしました。 彼らは、努力すれば報われると信じているわけでも、逆に天才肌で何もしないわけでもなく、「逃れられないから作る」という感覚で日々作品に向き合っています。思い通りにならない素材と格闘しながら、偶然の“転がり”すら拾い上げる柔らかさがある。その姿に触れると、自分の仕事でも、全部をコントロールしようとするより、流れに乗る瞬間を見逃さない方がいいのかもしれないと思えてきます。 もう一つ刺さったのは、「どう伝えるか」を考え続ける人たちの姿です。声楽の学生が「言葉を出せる楽器は声だけ」と語る場面や、指揮者が人間力を重視するくだりは、アウトプットの質は技術だけで決まらないという当たり前を、改めて突きつけてきます。人に届く表現って、丁寧に積み上げた理解や体験がにじむものなんだと感じました。 天才を特別視するというより、「ものづくりを避けられない人の生態」をのぞき見する本です。自分の仕事に向き合う姿勢を見直したい人に、特に静かに刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
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