
「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本
山下泰平
この本について
最近、昔の作品を読むときに「なんでここだけ妙にリアルで、ここは急に荒唐無稽なんだろう…」みたいなズレを感じることが多くて、自分の読み方が間違っているのかと悩むことがあります。物語の系譜って知りたいけど、学術書ほどガチじゃなくて、でも雑談レベルでは物足りない…そのあたりの中途半端な欲求をどう扱えばいいのか、ずっと迷っていました。 この本は、そのモヤモヤに割と気前よく答えてくれます。明治の娯楽物語がどんな混沌から生まれ、どういう読者の欲求に応え、どういう仕組みで私たちの「物語の感覚」につながっているのかを、遠回りしながらもちゃんと教えてくれる。講談師と速記者が無理矢理作業させられる現場の空気とか、読者が「理屈より面白さ」を求めた結果どうジャンルが育ったかとか、そういう“地べたの事情”が見えてくると、今読んでいる作品の見え方が少しずつ変わっていきます。 一番ありがたいのは、この本が名作ばかりを神棚に上げないところです。むしろ「時代を代表しない普通の作品の積み上げ」が文化をつくるという視点が、なんだか自分たちの仕事や日常にもそのまま響いてくる。混沌のなかで手探りしていた明治の作者たちを見ると、自分のぐだぐだした試行錯誤にも、ほんの少しだけ肯定的になれる気がします。 昔の物語の“変な手触り”を放置できない人、創作や仕事で「自分の土台ってなんだろう」と立ち止まることの多い人には、かなり刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
読書の順序
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