
熱帯 (文春e-book)
森見 登美彦
文藝春秋 / 2021-09-01
この本について
最近、うまく言語化できないまま「自分のペースがつかめない」とか「現実と頭の中の距離が妙にズレている気がする」と感じることが増えていました。忙しさというより、世界を見るためのレンズが曇ってくる感じです。そんなときに森見登美彦さんの『熱帯』を読んで、ちょっと呼吸が戻ったところがあります。 この本が効いたのは、まず「本棚」という場所の描き方でした。読みかけの本や、いつか読めるようになりたい本が、過去の自分と未来の自分をごちゃまぜにした“心の内部”みたいに立ち上がってくる感覚があります。自分が停滞している気がしても、本棚を見ればちゃんと歩いてきた道がある、そんな視点を思い出させてくれました。 もう一つは「レンズ」の話です。世界の見え方が歪む瞬間をこんなに静かに、しかし具体的に書いた物語はあまりありません。妄想でも陰謀論でもなく、その人にとっては現実そのものとして立ち上がる世界。その描写に触れていると、自分の混乱にも名前がつく感じがあって、無理に整えようとしなくてもいいんだと思えました。 淡々とした奈良での生活や、京都の街を歩く場面も効いていて、日常が続いているだけで安心する瞬間があります。物語としての奇妙さと、生活の手触りが同居しているので、迷っている最中でも読み切れました。 世界の見え方が揺れている人、生活のリズムを取り戻したい人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの52%が集中しています。
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