
有頂天家族 (幻冬舎文庫)
森見登美彦
幻冬舎 / 2017-04-04
この本について
忙しさに追われていると、自分の生活がどこか「薄い」と感じる瞬間がありませんか。やるべきことは片付いていくのに、心だけ置いていかれるような、そんなモヤモヤです。言葉にできないまま流してしまうけれど、本当はもう少し日々に手触りがほしい、そんな気分のときがあります。 『有頂天家族』を読んだ人が「天網恢々」「気息奄々」「満艦飾」といった言葉を保存していたのを見て、物語そのもの以上に“言葉の濃さ”に惹かれているんだろうなと思いました。森見さんの京都は、紺碧の空も、行燈の明かりも、少し誇張されているようで妙にリアルで、読み手の感覚をゆっくり取り戻してくれます。登場人物たちが業腹になったり、恋の鞘当てに噎せたりする姿も、ばかばかしいのにどこか人間くさくて、肩の力が抜けていきます。 この作品が効くのは、現実から離れるというより、むしろ日常を別の角度から見返す感覚を取り戻させてくれるところです。例えば、普段ならスルーしてしまう景色に一瞥を向けられるようになったり、家族や仲間との距離感に少しだけ温度が戻ったりする。大げさな成長ではなく、ほんの小さな視点のズレが心に残るタイプの本です。 「忙しいのに、心だけ置き去りになっている気がする人」に静かに刺さります。読後すぐに何かが劇的に変わるわけではありませんが、翌日の街の色がほんの少し濃く見える。そういう本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの24%が集中しています。
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