
聖なる怠け者の冒険
森見登美彦
この本について
仕事に追われていると、頭は動いているのに心だけ置き去りになっているような感覚になることがあります。考えごとを止めたいのに止まらない。昼日中なのに不定愁訴みたいなモヤモヤがまとわりつく。そんな時に限って、細かいことばかり気になってしまう。僕もよくそのループに落ちます。 『聖なる怠け者の冒険』を読んでいて思ったのは、そのモヤモヤに「まとわりつく空気ごと別の世界に連れていく」力があるということです。読者が保存した抜粋を見る限り、難読語や古い言い回し、匂いや湿度まで感じる描写に惹かれているように見えます。モンパルナス、駒形提灯、濛々とした空気、籐椅子の手触り。そういう細部が積み重なることで、自分の頭のなかのざわつきが、物語のざわつきに置き換わっていくんですよね。自分の悩みがいったん外側に逃がされる感じがある。 もう一つ効いたのは、登場人物たちの「意気軒昂だけどどこか抜けている」雰囲気です。節を屈してでも前に進むわけではなく、かといって諦めてもいない。人いきれの中をふらふら歩きながら、気づけばちょっと違う場所に着いている。その曖昧さが、自分もこうでいいのかもしれないと肩の力を抜かせてくれます。 だからこれは、大きな答えを求めていない人、ただ少しだけ呼吸を変えたい人に刺さる本だと思います。今の気分を抱えたまま読み進めて、勝手にどこかへ連れていってもらうくらいがちょうどいい一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの15%が集中しています。
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