
太陽の塔(新潮文庫)
森見登美彦
青春出版社 / 2018-03-19
この本について
人付き合いが苦手とか、季節のイベントがやたら眩しく見えてしまうとか、そんなとき「自分だけ世界からズレているのでは…」という気分になることがあります。逃げ場がない感じが強くなると、余計にその感覚がこじれていくんですよね。 森見登美彦『太陽の塔』を読んでいて思ったのは、そのズレを無理に矯正しようとしなくていい、というよりも、ズレて見える自分の感情をそのまま楽しんでしまう余白があってもいいのでは、ということでした。異様に誇張された語り口の裏には、他人とうまく距離が取れない学生の、不器用な自意識が丸見えになっています。完璧に間違っているのに妙に筋が通ってしまう理屈や、クリスマスへの過剰な敵意のようなものが、逆に「自分も似たようなことを考えては黙って飲み込んでいたな」と思い出させてくれる。苦いものが必ずしも薬じゃない、という一節が示すように、感情の苦味そのものを一度落ち着いて味わう余裕を取り戻せる本でした。 読み終えて残るのは、孤独が特別な物語ではなく、ただの生活の一部として息づいているような感覚です。距離のある人との関係にどう向き合うか、あるいは向き合わずにやり過ごすか。そんなことを悩みながら生きている人には、とても静かに効きます。 「人並みに振る舞えと言われるとしんどい」という人に刺さる一冊です。
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