
シンセミア(下) (講談社文庫)
阿部和重
講談社 / 2013-05-15
この本について
日々、自分の中にある“説明しきれないざらつき”みたいなものに、どう向き合えばいいのか分からなくなるときがあります。表向きは普通に暮らしているのに、どこかで境界が揺らいでいる感覚というか。言葉にしづらいだけで、けっこう多くの人が抱えている気がします。 『シンセミア(下)』を読んでいると、その揺らぎ自体を無理に整えようとしない世界に出会います。生者と死者の境界があいまいになったり、小さな町の噂や暴力や妄想が入り混じったり、人物の内側と外側がうまく分けられなくなったりする。読者が保存している抜粋にも、その“曖昧さの濃度”に反応している気配があって、読みながら、自分の中にも似た混線があることを静かに認めざるを得なくなります。 一つは、意味づけを急がなくてもいいという感覚が得られるところ。作中の人物たちも、自分の立ち位置を簡単には説明できないまま動き続けています。もう一つは、小さな町で起きる出来事の泥臭さが、逆にリアルな手触りとして残って、自分の生活の「見えていなかった部分」を照らしてくれるところです。心理的な答えよりも、風景や匂いのほうが先に迫ってきて、そこでやっと自分の感情が動き出すような読書体験になります。 「世界の輪郭が少し歪んで見えるとき、その歪みごと抱えていたい人」に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの20%が集中しています。
読書の順序
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