
シンセミア(上) (講談社文庫)
阿部和重
この本について
仕事でも生活でも、なぜか「そこまで見なくていいのに、見えてしまうこと」に疲れる瞬間ってありませんか。人の気配に敏くなったり、考えなくていいはずの可能性まで想像してしまったり。自分でも説明しにくいけれど、過敏さみたいなものに振り回されることがあると思います。 『シンセミア(上)』を読んでいて、保存されていた抜粋の多くが、まさにその“過剰に見えてしまう感覚”に触れた部分だと感じました。金縛りの描写のように、現実と意識の境目がほどけていく瞬間。何気ない単語ですらざらっとした質感で迫ってくる語彙の濃さ。登場人物が、自分の内側で起きていることを持て余している空気。そのどれもが、普段は押し込めている心のざわつきを少しだけ言語化してくれるように思います。 この本が効くのは、問題を解決してくれるからではなく、日常の裏側にある「説明しづらい違和感」をそのまま扱ってくれるところです。視界が勝手に広がってしまう感じや、些細なことに心が引っ張られる感覚を、物語の濃密さで代わりに受け止めてくれる。読みながら、自分の中のざらつきが「あるもの」として輪郭を持ちはじめるのが、静かだけど確かな変化でした。 こんな人に刺さると思います。普段は理性的に振る舞っているけれど、内側ではずっとざわつきが消えないタイプの人。物語としては重さもありますが、その濃さが逆に安心材料になる読書でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの30%が集中しています。
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