
緩和ケア医が、がんになって
大橋洋平
双葉社
この本について
がんじゃなくても、生きていると「結果がわかれば安心できるのに」とか、「弱音を出したら迷惑かけるだけかな」とか、心がせわしなくなる瞬間ってありますよね。頭では「比べても意味がない」とか「無理しないほうがいい」とわかっていても、体も心も追いつかないまま日々を回してしまうというか。 この本が刺さるのは、その“追いつかなさ”がそのまま言葉になっているところでした。著者は緩和ケア医でありながら、がんの当事者になった人です。体が思い通りにならない日々の描写は、生々しいほどリアルで、でも悲壮感だけじゃない。たとえば「食べられなくても、生きられる」と腑に落ちるまでの過程や、結果が見えない不安と共存しながらも「それでも今日を過ごしている」という視点の揺れ。あるいは、ただ電車に乗って往復するだけの小さな旅に、生活の輪郭が戻っていく感じ。どれも“正しさ”より“現実”を見ているから、無理に前向きへ引っ張られないのが救いでした。 読みながら思ったのは、強くなろうと気合を入れることより、「いまの自分をそのまま扱う」ことのほうが、案外むずかしいということ。苦しいときにいい人でいる必要はないし、がんと共に生きるなんて本音では嫌だ、と著者自身がはっきり書いてくれる。その正直さに、こちらの肩の力も少し抜けていきます。 大きな答えはなくても、目の前の生活をどう積み重ねていくかを探している人には、静かに効いてくる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの21%が集中しています。
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