
天龍院亜希子の日記 (集英社文庫)
安壇美緒
この本について
人間関係って、表向きは普通に過ぎていくのに、ふとした瞬間に刺さる言葉や、誰かの態度の「温度差」で気持ちがざわつくことがありますよね。自分だけが子どもっぽいんじゃないかとか、逆に大人ぶって空回りしているんじゃないかとか。仕事も恋愛も、正解がないまま進んでいくのに、気づいたら心が小さく擦り切れている。そんな時、この小説の空気に少し救われる瞬間がありました。 登場人物たちはみんな「ちょっと不器用な大人」で、正しさよりもその時の気分や立場で振る舞ってしまう。でもその不格好さが妙にリアルで、自分の中にもある厄介さにそっと手を当てられるような感覚がありました。たとえば、誰かの言葉にいちいち妄想がこびりついて離れなかったり、相手を軽く見てしまう瞬間に自分で嫌気がさしたり、仕事のちょっとした会話や頼られ方に妙に救われたり。大ごとじゃないのに胸が動く場面がたくさんあって、「ああ、自分だけじゃないんだ」と呼吸が整うような読後感があります。 特に、何かを大きく変えたわけでもないのに、ほんの一言で景色が変わるあの感じ。生活は散らかったままなのに世界だけが急に明るく見える瞬間がある。その描写が抜群にうまくて、読んでいるこっちまで思い出せるんですよね、自分にもそんな日があったこと。登場人物の未熟さや矛盾がちゃんと許容されて描かれていて、そこがこの物語の優しさだと思います。 人の些細な言動にいちいち心が動いてしまうタイプの人には、特に刺さるはずです。
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