
銀河鉄道の父 (講談社文庫)
門井慶喜
講談社 / 2017-09-12
この本について
働くことにどこかモヤモヤしたり、「家族の期待」や「自分の役割」みたいなものに押しつぶされそうになる日ってあります。逃げたいわけじゃないのに、まっすぐ向き合えない自分がいて、でも誰にも言えない。そんなときに思い出すのが、この物語の政次郎と賢治の距離感でした。 この本が効いてくるのは、立派な教訓があるからではなく、親子が不器用なまま噛み合おうとするその“温度”が、現実の私たちの感覚に近いからだと思っています。たとえば、賢治が「逃げている」とわかっていながらも完全に突き放せない父のまなざし。あるいは、感染を心配しながら顔を離せず小声で語り続ける場面に、責任と愛情の両方に揺れる大人のリアルがそのまま滲んでいて、自分の生活と地続きに感じるんです。 そして政次郎自身もまた、学びたい気持ちを押し込められた経験を抱えた人間として描かれているから、「正しさ」を一方的に押しつける父ではなく、諦めや願いを抱えたまま立っているひとりの人として見えてきます。誰かに期待され、誰かに縛られ、それでも前に進もうとしている人には静かに刺さると思います。 家族とうまく噛み合わないときや、自分の選択に自信が持てないとき、少し距離を置きたいのに離れられないあの感じを抱えているなら、この物語は同じ地面に立ってくれるはずです。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
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