
世界哲学史8 ──現代 グローバル時代の知 (ちくま新書)
伊藤邦武、山内志朗、中島隆博、納富信留
この本について
最近、何が正しいのか分からなくなる瞬間が増えました。理性で割り切ろうとすると逆に息苦しくなるし、一方で感情や身体の手触りだけに頼るのもどこか不安定で落ち着かない。そんなふうに、自分の立っている場所がぼんやりしてくる感覚ってあると思います。 この『世界哲学史8』を読んで面白かったのは、「理性か、それ以外か」といった単純な二択ではなく、人間をめぐる前提そのものをもう一度ゆるやかに組み替えていく視点が丁寧に並んでいるところでした。たとえば、ドゥルーズが言う“差異のほうが先にある”という発想に触れると、自分の中の「同じであるべき」という無意識の圧が少し弱まる。アドルノらが投げかけた、理性そのものが暴力を生む可能性への問いを読むと、「合理的に考えればいい」という言葉の裏にある影に気づける。そしてポストモダンの議論に触れると、大きな物語に乗れない自分を不必要に責めなくなる。 この本は、明快な答えを手渡してくれるというより、自分の思考が窮屈になっているところに新しい入り口をつくってくれる一冊でした。特に、「いまの世界をどう読み解けばいいのか分からないまま、何となく疲れている人」にしっくり来ると思います。 まとまらない感覚のまま読んでいい本です。その“まとまらなさ”にもちゃんと居場所がある、と教えてくれるので。
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