
哲学者ディオゲネス 世界市民の原像 (講談社学術文庫)
山川偉也
講談社 / 2008-01-11
この本について
日々、人との距離感とか、当たり前とされているルールにどこかモヤっとしながら、それでも「まあ仕方ないか」と自分を丸めて過ごしてしまうことってあると思います。僕もけっこうそうで、気づけば周りの空気に合わせるだけで終わる日があるんですよね。 この本のディオゲネスは、そんな曖昧な境目をごまかさずに生きようとした人でした。権力者が目の前に来ても光を遮られたらどいてくれと言うし、街の雑踏にランプを持って出て「人間を探している」と平然と言い放つ。奇抜さよりも、彼が「世界ってほんとにこの形で納得していいのか」を自分の体で確かめようとしていた点が妙に胸に残ります。運命に勇気を、習慣に自然さを、情念に理性をぶつけるという姿勢は、僕らの日常にも静かに効いてくる感覚があります。 もうひとつ印象深いのは、通貨変造の話のように、彼がただの反抗者ではなく、具体的な怒りや義憤を抱えた一人の市民だったということです。世界市民という大きな理念も、こうした生活の感情の延長にあるんだなと感じられて、妙な距離の近さが生まれます。 常識に違和感を覚えつつも、うまく言語化できないまま過ごしてしまう人に刺さる本だと思います。自分の輪郭をもう一度確かめたいときに、静かに助けてくれる一冊でした。
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