
詩とは何か (講談社現代新書)
吉増剛造
この本について
最近、能動的に動かなきゃいけない場面が増えるほど、「自分が主役にならなくてもいい瞬間って、本当はどこにあるんだろう」と考えることがあります。頑張っても空回りしてしまう日や、言葉が出てこないときほど、無理に前へ出ようとする自分がしんどくなるんですよね。 吉増剛造さんの『詩とは何か』を読んでいて救われたのは、詩作の核心にあるのは“受動性”だ、と静かに語られていたところでした。ブリューゲルの絵の片隅の少女のように、中心ではないものに目を向ける姿勢。あるいは、自分でも気づかない「弱いしぐさ」を待ち受ける態度。著者はそれをネガティヴ・ケイパビリティとして語りますが、要するに“こちらが頑張ってつかみに行くのではなく、降りてくるものに寄り添う”感覚なんだと思います。読んでいると、自分の言葉や仕事にも、そういう受け取り方を許していいのかもしれないと思えてきます。 もうひとつ大きかったのは、「他力」という言葉の扱い方です。外側から運ばれてくる偶然や気配を、コピーのように写し取っていく。その態度が、創作だけでなく、日常の判断や会話にもじんわり効いてくる感覚がありました。能動性が正義と言われがちな今だからこそ、「笊で水をすくうように考える」という道元の比喩が胸に残ります。 自分の中で言葉が固まりすぎていると感じる人、何かを生み出そうとして焦っている人には、そっと呼吸の仕方を変えてくれる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの71%が集中しています。
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