
殺しへのライン ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)
アンソニー・ホロヴィッツ、山田 蘭
東京創元社 / 2022-09-09
この本について
仕事でも人間関係でも、場の空気を読み違えたり、小さな違和感をスルーして後から「やっぱりあれ変だったよな…」と思うこと、けっこうありますよね。忙しい日々だと特に、細部を見る余裕がなくなるというか。そんなときに、この『殺しへのライン』のような“細部がすべてを動かす世界”を読むと、少しだけ感覚が研ぎ澄まされる気がします。 この物語の魅力は、派手なトリックより、登場人物のふとした言動が不穏さを帯びていくところです。玄関に置きっぱなしの財布から五十ユーロが消えたり、チップの五ポンドだけがなくなっていたり、朗読会で誰かの視線がわずかに揺れたり。そういう「大ごとじゃないのに気になる違和感」が積み重なり、気づけば事件の核心に近づいていきます。日常の中で曖昧に流していた兆しに、自然と目がとまるようになる感覚が心地よいんです。 そして、ホーソーンと語り手の“噛み合っているようで噛み合わない関係”も効いてきます。過去に何があったのか、質問されても語りたがらないホーソーンと、そこにいら立つ語り手。その距離感が、事件の謎と同じくらい読む側の好奇心を揺さぶってくれます。人の表情のゆらぎや、言葉の裏にあるものを拾いたい人にはたまらないはず。 日常の中の微妙な違和感に敏感になりたい人、あるいは“沈黙が多い相手こそ気になってしまうタイプ”の人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの39%が集中しています。
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