
いい子のあくび (集英社文芸単行本)
高瀬隼子
集英社 / 2023-07-05
この本について
人にぶつかられたとき咄嗟によけてしまうとか、誰にも頼まれてないのに気づいてしまって動くとか、本当は納得していないのに「まあ私がやる方が早いし」で飲み込んでしまうとか。そんな場面が積み重なると、自分の中にたまっているはずの苛立ちが、言葉にできないままどこへも行き場がなくなります。私もよくそこで足が止まります。 『いい子のあくび』は、そこで無理に前向きにさせたりしません。むしろ、駅での憎しみみたいな空気や、優しくできる自分とひどい自分が同時に存在する感覚、誰にも見せたことのない“着ぐるみの内側”を、見て見ぬふりをしないまま書いてくれます。読んでいると、なんで私は気づいてしまうんだろうとか、誰のために頑張ってるんだろう、という問いが少しだけ別の角度から見えるようになります。優しさと疲れがごちゃ混ぜのままでも、生きている人間として扱われている感じがするんです。 特に、「わたしがよけたからまっすぐ歩けた人だ」というあの感覚に覚えがある人にはすごく届くと思います。誰かにとって“良い人”を演じ続けて、ふと自分の顔の原形が分からなくなる瞬間がある人にとっては、痛くて、でもどこか救われる小説です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
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