
おいしいごはんが食べられますように (講談社文庫)
高瀬隼子
講談社 / 2022-03-24
この本について
仕事の場で、人の「できる/できない」に自分の気持ちが揺さぶられることってありますよね。誰かの弱さに苛立つ自分も嫌だし、かといって全部を飲み込むほど強くもない。ケーキ一つ、ランチ一つ、「おいしいね」と言い合う空気にすらしんどさを覚えることがあって、そんな小さな違和感ほど誰にも言えなかったりします。 『おいしいごはんが食べられますように』は、その「言いにくい違和感」をまっすぐ描いてくれる小説です。ごまめ制度の窮屈さとか、弱い人を責めたくないのに心がざわつく瞬間とか、同僚の“やさしさ”にふと暴力性を感じてしまうとか、読んでいると自分の中で蓋をしていた気持ちがじわじわ動き出します。誰かと食事をすることが「生きようという約束」だという一文には、いまの自分の生活をそのまま覗かれたような感覚がありました。 この本が効くのは、正しくあろうとするほど息苦しくなる人です。できる・できないの線引きに疲れてしまった時、登場人物の揺れ方に寄りかかれる。弱さと向き合うのに、無理な前向きさを求めてこないところも安心でした。仕事の人間関係に少しでもしんどさを抱えている人には、静かに刺さると思います。
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