
サンショウウオの四十九日
朝比奈秋
この本について
人と関わるたびに、「どこまでが自分で、どこからが他人なんだろう」とか、「自分だけが抱えていると思っていた気持ちって、もしかしたら誰かとつながっているのかもしれない」と、説明しづらいモヤモヤが残ることがあります。言葉にできないけれど、ふと身体の奥でざわつくあの感じです。 『サンショウウオの四十九日』は、その曖昧な境界を丁寧に見つめ直させてくれる小説でした。抜粋にもあるように、「自分だけの体なんてない」「意識は混じらないけれど、経験は共有される」といった視点は、孤立しているように見える日々の感覚をそっとずらしてくれます。誰かと完全に分かれていないからこその息苦しさもあれば、だからこそ保たれている安らぎもある。そのどちらも否定しないところが、この本のやさしさだと思います。 さらに、身体や意識をめぐる描写がとても生々しくて、読む側の記憶や感情まで引き連れてきます。収骨室の場面や、ザリガニのからだに光が透ける瞬間など、「生きている身体と、そこに宿る意識」を実感として受け止めざるをえません。小賢しい悟りではなく、「まだしばらくはこうやって生きていく」という現実に着地していく感覚が残りました。 人と自分の境界に敏感な人、あるいは「自分だけの何か」をうまく持てずにしんどさを抱えている人には、静かに効いてくる本だと思います。
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