
境界線
中山 七里
実業之日本社 / 2016-03-01
この本について
人と関わっていると、ときどき不思議な気分になります。目の前の相手が確かに“いる”はずなのに、その人の背景も事情も分からなくて、どこまで踏み込んでいいのか迷う。あるいは、自分自身も「存在していいのか」とふと心が揺らぐことがある。被災や喪失の経験がある人はなおさらで、何を基準に人の価値を測ればいいのか分からなくなる瞬間があると思います。 『境界線』は、そんな曖昧で形にしづらい気持ちに静かに触れてきます。抜粋にある「身体があるだけでは存在にならない」という言葉は、重いけれど現実的で、社会の中で名前や記録に縛られる人間の弱さを突いてきます。また、同じ喪失を経験しても怯える人と無頓着になる人が生まれる、その差をどこに求めればいいのかという問いも、自分が災害や不条理をどう受け止めてきたかをゆっくり振り返らせてくれます。さらに、「災いは公平ではない」という視点は、被害を免れた側の後ろめたさや、言葉にできないねじれた感情まで丁寧に拾ってくれるので、読みながら自分の中の整理されていない部分が少しずつ形になる感覚がありました。 派手な力技で心を動かす本ではなく、むしろ揺れている気持ちに寄り添いながら、自分と他人の間にある見えない境界をそっと示してくれる物語です。特に「喪失の受け止め方に正解があると思ってしまいがちな人」に刺さるはずです。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの21%が集中しています。
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