
嗤う淑女 (実業之日本社文庫)
中山 七里
実業之日本社 / 2019-01-25
この本について
人間関係で「言葉にできない違和感」を抱えたまま、でも理由は説明できないまま飲み込んでしまうことってありませんか。初対面の人の“妙な上品さ”とか、場の空気に合わせてくれるはずの誰かの一言が、なぜか胸に引っかかるとか。自分でも気のせいだと思おうとするけれど、後からじわじわ効いてくるあの感覚です。 『嗤う淑女』を読んで印象的なのは、読者が保存した言葉の多くが、人物の「表情や所作、語彙の選び方」に宿る“ずれ”や“作為”に関わるものばかりだということです。たとえば、身なりや振る舞いの背景にある階層意識の微妙な綻び。あるいは、理屈としてはわかっているのに、どこか得心のいかない会話のトーン。こうした小さな違和感がどのように人の心へ入り込み、関係を歪ませていくのかを、本書はとても克明に見せてきます。 読み進めるうちに、「自分が日常で感じていたモヤモヤの正体って、こういう仕組みだったのかもしれない」と思わされる場面が何度もありました。誰かの善意めいた言葉の裏にあるお為ごかし、場の流れに唯々諾々と従わせる力学、知性のような顔をした混ぜっ返し。こういうものを“見抜けなかった自分”を責める必要はなくて、ただ仕組みを知るだけで行動の選択肢が増える。そんな視点の転換をくれる物語だと感じています。 人の心の綻びや狡さに敏感なのに、言語化がうまくできないまま飲み込んでしまいがちな人に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
読書の順序
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