
葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)
歌野 晶午
文藝春秋 / 2007-05-10
この本について
日々、人の気持ちってどこまで分かるんだろう…と考え込む瞬間ってありませんか。相手の言葉を信じたいけど、どこかに違和感があって飲み込めない。そのまま自分の勘まで疑いはじめて、だんだん疲れてくる。僕もよくその堂々巡りに落ちます。 『葉桜の季節に君を想うということ』を読むと、その“勘”の揺れ方が少し整理されるんですよね。読者が保存している言葉を眺めていると、「忽然と」「悄然」「所在なげ」みたいな、場面の空気が一気に濃くなる語が多い。ああ、やっぱりこの物語は“言葉の手触り”で人の嘘や本音をすくい取る話なんだと改めて思います。登場人物のちょっとした仕草や、部屋の匂い、雑踏の気配が丁寧に描かれていて、そこに潜む違和感が少しずつ輪郭を持ってくる感じがします。 もうひとつ大きいのは、正しさよりも「人間の弱さ」をまっすぐ見せてくれるところです。情婦や間男、酩酊、みかじめ…といった、生々しい語がぽんと置かれていて、きれいごとでは済まない現実の質感が出てくる。だからこそ、登場人物の選択が無性に腑に落ちる瞬間があって、自分の中の複雑さも少し許せるようになる気がします。 物語の仕掛けに驚きたい人だけでなく、「人の心の奥を描く小説が読みたいとき」に刺さる一冊です。読後には、自分が日々感じていたあの微かなざわつきの正体が、少しだけ言葉になるはずです。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
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