
N (集英社文庫)
道尾秀介
文響社 / 2016-07-27
この本について
最近、人の話を聞くときに「どこまでがその人の本音なんだろう」とか、「同じ出来事でも視点が変わると全然違って見えるよな…」みたいな小さなざらつきが残ることがあります。相手を疑うというより、自分が何を見落としているのか分からない感じ。そのまま放っておくと、対人関係でも仕事でも、判断が濁っていくようなときがあるんですよね。 道尾秀介の『N』は、その“視点のズレ”を静かに揺さぶってくる本でした。読む順番で人物の印象が変わる構造のおかげで、「自分はいつも一部分だけを見て決めつけていたのかもしれない」という感覚がじわっと残ります。短編集のように読めるので気負わず入れるのに、読み終わると視点が少しだけ広がっている。古タイヤから空気が抜けるような溜息をつくシーンの、あの“疲れ”のリアルさも、登場人物の陰影を立体的にしてくれます。さらに、鳥目は噓だという一文のように、さりげない事実が物語の認識をひっくり返す瞬間があって、思い込みで世界を見ていた自分に気づかされました。 特に、「人の内側をすぐに断定してしまう自分にちょっと疲れている人」に刺さると思います。劇的に心が整うタイプの本ではないですが、読み終えたあとに、自分の視界がほんの少し静かに調整されるような感覚が残る一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの31%が集中しています。
読書の順序
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