
藪の中
芥川 竜之介
Google, Inc. / 1969
この本について
人の話を聞いても、どこまでが本音で、どこからが思い込みなのか分からなくなる瞬間ってありますよね。仕事でも、誰かの発言の裏を読みすぎて疲れたり、逆に自分の認識に自信が持てなくなったり。そんなときに『藪の中』を読み返すと、少し視点の置きどころが変わります。 読者の方が保存していた「嗔恚」「悄然」「昂然」みたいな言葉の数々って、ただの古語というより、語り手それぞれの内側の揺れを示す手がかりだと思うんです。誰もが堂々としていそうで、実際には怒りや恐れやプライドを抱え、都合よく記憶を編集している。そのずれが「袖さえ捉えなかった」「縄は盗人の有難さに」みたいな細かな描写に染み出していて、読みながら自分の“思い込みの癖”まで気づかされます。 効き方としては二つあって、ひとつは、同じ出来事でも人の立場によって世界の見え方はこんなに変わるのだと、ごく冷静に受け入れられるようになること。もうひとつは、自分の記憶や感情も案外あてにならないと認めたうえで、人の話を聞くときに少し距離を置けるようになることです。曖昧さを怖がらずにいられるというか、急いで結論を出さなくてもいいと思えるようになります。 「物事の“確かさ”を探し続けてしんどくなっている人」には、とくに刺さると思います。大げさに人生を変えるような本ではないけれど、日々の判断のクセをそっと揺らしてくれる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの30%が集中しています。
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