
鼻
芥川 竜之介
千歳出版
この本について
人と関わっていると、相手の不調には同情できるのに、いざその人が立ち直ると、なぜか胸の奥がざらつく時があります。自分が嫌な人間になったみたいで、余計にモヤモヤするやつです。理屈では説明しづらい感情ほど、後からじわじわ効いてきますよね。 芥川龍之介の「鼻」を読むと、そのモヤモヤに名前がつく感覚があります。人の不幸には寄り添えるのに、回復にはどこか物足りなさを感じてしまう――そんな、誰もが持つ“見たくない感情”を、芥川は淡々と描き切ります。内供という人物が、長年のコンプレックスから解放された瞬間に、周囲の微妙な敵意のような空気を察してしまう場面は、妙に現代的で、読んでいて胸の奥がひやっとしました。自分の心の動きを正直に認められたときの、あの少し苦いけれど前に進める感じがこの作品にはあります。 他人との距離感に疲れた時や、誰かへの感情がきれいに説明できずに戸惑っている時、この短篇はちょうどいい鏡になります。自分が弱いからこう思うのではなく、人間誰しも同じ矛盾を抱えているという当たり前の事実に、静かに戻してくれる作品です。 人間関係に「なんでこんな気持ちになるんだろう」と悩む人に刺さりやすい一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの67%が集中しています。
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