
火の鳥
太宰 治
手塚プロダクション / 2015-12-20
この本について
人間関係で、相手をどこまで信じていいのか分からなくなる時ってありますよね。嘘をつかれた気がして距離を置きたくなる一方で、なぜか完全には切れないまま心の中に残ってしまう。頭では整理できないのに、気持ちだけがぐるぐる動き続けるあの感じに、ぼくもけっこう振り回されます。 太宰治の「火の鳥」は、まさにその揺れ方をそのまま文章に落とし込んだような作品です。「ずいぶん噓つき」という突き放すような言葉と、「僕は、乙やんを信じているのだ」という必死さが同じ場所にある。人を疑いながら、それでも信じたいと思ってしまう矛盾に、読む側の胸の奥まで手が届くような感覚があります。太宰は大きな答えを示したりはしませんが、嘘と信頼のあいだを人がどう歩くのか、その微妙な体温を丁寧に拾ってくれます。 この作品が効くのは、決断の前に気持ちばかり揺れてしまう時です。相手ではなく、自分がどうしたいのかを見つめ直すきっかけになるし、善悪で割り切れない関係の続け方に少し風が通るような感覚があります。表面的には小さな物語ですが、揺れた心を抱えたまま生きている人には、静かに響くものがあると思います。 こんな人に刺さります。相手の言葉を疑いながら、それでも完全には手放せない関係を抱えている人。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
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