
斜陽
太宰 治
角川書店 / 1950
この本について
最近、うまく立ち振る舞おうと気取ってみたものの、どこか空回りしたり、頑張っても誰にもわかってもらえない気がしたりしませんか。私もそういう時期が続くと、何を拠り所にして生きていけばいいのかよくわからなくなります。そんなときに読み返したのが『斜陽』でした。救われる、というより、「ああ、こういう感情を抱えていいんだ」と静かに許される感じがあるんですよね。 太宰の人物たちは、みじめさや弱さをごまかさずにさらしてしまうから、自分の心の奥で密かに感じていたものが、そのまま言葉にされているように思えます。たとえば、人の生活の大半は“待つこと”でできているというあの一文は、焦る日々を少しだけ俯瞰させてくれますし、「不良とは、優しさのことではないかしら」という視点は、自分や他人の曖昧な部分を決めつけずに受け止める余裕をつくってくれます。そして、「生き切ることは、やりきれない大事業」という言葉に触れると、今日をなんとかやり過ごしているだけでも十分だと感じられてくるんです。 きれいに前向きに整えた言葉では届かないところに刺さるので、表面的な励ましより“正直な感情”に寄り添われたい人に向いています。悩みの出口を示すというより、迷っている自分を否定しないまま歩き続けるための体温をくれる一冊だと思います。
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