
イニシエーション・ラブ (文春文庫)
乾 くるみ
文藝春秋 / 2007-04-10
この本について
恋愛って、当事者のときは自分の感情しか見えていないのに、あとから振り返ると「あれ、あのときの自分って何してたんだろう」と急に恥ずかしくなることがあります。相手の気持ちを測りかねて電話ばかりしてしまったり、会える時間を損得で計算してしまったり、逆に自分の都合だけで押し切ろうとしてしまったり。頭ではわかっていても、関係の中にいると行動の歪みに気づきにくいんですよね。 『イニシエーション・ラブ』の抜粋を見ていると、多くの人が刺さっているのは “自分が恋愛にのめり込んでいた頃の感覚を思い出す瞬間” だと思います。家賃や通勤時間を必死に計算して恋人との距離を縮めようとしていたり、都合の悪い違和感を見ないふりして関係を続けたり、相手の一言に一喜一憂したり。読みながら、当時の自分の幼さや必死さを照らされる感じがあるんですよね。そして、その「絶対」という言葉の脆さに向き合わされるところが、この作品が効いてくるポイントだと思います。 とはいえ、これはただの恋愛小説ではなく、読み終わったあとに自分の思い込みの“穴”をそっと見せてくれるタイプの作品です。恋愛の失敗や黒歴史がまだ少し疼く人ほど、じわっと刺さるはずです。特に「当時は正しいと思っていた行動が、いま思えばちょっと滑稽だった」という感覚を抱えたことのある人には、静かに効く本だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
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