
小説 秒速5センチメートル (角川文庫)
新海 誠
この本について
人間関係って、いざ距離ができた途端に「どこまで踏み込んでいいのか」分からなくなったりしますよね。昔の気持ちほど強いはずなのに、いざ向き合おうとすると急に怖くなる。時間がたつほど、あのときの自分の正しさも曖昧になっていく。今回の抜粋を読んでいて、そんなモヤモヤに心当たりがある人が多いんじゃないかと思いました。 『小説 秒速5センチメートル』がすごいのは、初恋のキラキラを描いているからではなく、あの瞬間に確かにあった“強い思い”が時間にゆっくり侵食されていく現実まで正面から描いているところです。「手紙を渡せても渡せなくても、結果は大きく変わらなかったかもしれない」と語る視点や、相手の拒絶を勘違いしてしまう微妙な揺れ、誰かを思いながら別の誰かと過ごしてしまう罪悪感。読んでいて痛いくらいリアルで、自分でも整理しきれていなかった気持ちが静かに形になっていきます。 とくに刺さるのは、「想いが強すぎるほど関係を食い尽くしてしまう」ところや、「誰かの承認に支えられてきた自分が、それを手放せなくなる」ような場面。あの頃の気持ちを美化も否定もせず、「それも自分の一部だったんだ」と受け止められるようになるのが、この本の一番の効きめだと思います。 昔の恋や人間関係を引きずりがちな人、あるいは“あの時の自分”との付き合い方に迷っている人には、静かに効きます。
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