
小説 君の名は。 (角川文庫)
新海 誠
KADOKAWA / 2018-12
この本について
人を好きになるほど、その記憶だけ置き去りになっていく感じってありますよね。忙しさや時間に流されて、大事だったはずの気持ちが自分の中で薄れていく。忘れたくないのに、どうしてもこぼれてしまう。その無力さに、ふと立ち止まってしまうことが僕もよくあります。 『小説 君の名は。』を読み返して思ったのは、忘れてしまうこと自体を責めなくていいんだということでした。忘れる力が人間に備わっているのと同じように、それでも「もがく」力も備わっている。失われるものに抗おうとする時間そのものが、生きている瞬間なんだと気づかされます。三葉が髪を切った理由に瀧が後から触れる場面のように、自分が見落としていた誰かの想いに、読者としてそっと気づかされる瞬間もあります。 そして、この物語は「人と人がなぜ惹かれ合うのか」を運命論ではなく、紐のように捻れたり絡まったりしながら続く時間の流れとして描いています。たとえすれ違っても、一度つながった体験や感情はどこかに残り続ける。出会えるかどうかは分からないけれど、出会った時には必ず分かる。その感覚に救われる人は多いと思います。 大切な人を忘れたくないのに、どうしても日々が追い抜いていく。そんな経験のある人に静かに刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの20%が集中しています。
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