
午後のチャイムが鳴るまでは
阿津川 辰海
この本について
忙しさに追われていると、ちょっとした遊び心や余白みたいなものをどこかに置き忘れてしまった気がして、ふと立ち止まることがあります。大人になった自分が、昔より「工夫して楽しむ」ことが下手になったような、あのモヤモヤです。真面目に生きようとするほど、生活が一本調子になっていく感じ、僕もよくあります。 『午後のチャイムが鳴るまでは』を読んでまず感じたのは、そのモヤモヤをやわらかくほぐしてくれるような、ゆるい呼吸のしやすさでした。学校という小さな世界で起きるミステリといっても、人は死なないし、事件もどこか可笑しい。そのうえ、登場人物たちはありふれたものを使って精一杯遊ぼうとする。高校生にしてはちょっと子供っぽくて、時には馬鹿馬鹿しい。でも、その姿勢に触れると、自分の生活にも「このくらいの余白なら作れるかもしれない」と思えてくるんです。 もうひとつ効いたのは、軽さと知的なおもしろさがきちんと同居しているところでした。語りの中に突然出てくる着丼のような素っ気ない一言や、蓋然性をめぐるちょっとした言い回しに、日常の中で眠っていた感覚がふっと起き上がる感じがあります。難しく構えさせずに、でも小さく視点をずらしてくれる。そのバランスがちょうどいい。 日常が平板に感じてしまうとき、あの頃の自分が持っていたはずの“遊びの感覚”を少し取り戻したい人には、静かに刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの40%が集中しています。
読書の順序
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