
聖乳歯の迷宮 (文春文庫)
本岡 類
文藝春秋 / 2023-11-08
この本について
仕事をしていると、自分の“ものの見方”が偏っていないか、不意に不安になることがあります。専門知識は増えていくのに、世界の複雑さには追いつけていない気がして、どこか取りこぼしている感覚が残るというか。僕もよくそのモヤモヤに落ちます。 『聖乳歯の迷宮』は、そういうときに視点を揺さぶってくれる小説でした。ユダヤ系の天才たちの話や、火山灰で人骨が残らない理由、貝塚なら可能性があるといった地味な知識まで、登場人物の思考がとにかく具体的に動いていくんですよね。偏った仮説を鵜呑みにするでもなく、かといって完全に切り捨てるでもなく、「世界はこんなふうに見えるのか」と歩幅を合わせて考えさせられる。ロマンと現実の距離感のつかみ方が、生々しくて妙に納得できました。 特に、クラシック音楽のことがわからないままホロヴィッツの言葉だけが記憶に残っている、というあの感覚。自分も理解しきれていない世界にずっと引っかかり続ける感じが、すごく人間らしくて、その“引っかかり”こそが思考を前に進めるんだと教えてくれます。 自分の視界が狭くなっている気がするとき、現実と想像の境界で迷いながらも手を伸ばしていく物語に触れたい人に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの60%が集中しています。
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