
研究者、生活を語る 「両立」の舞台裏
岩波書店編集部
岩波書店 / 2024-10-18
この本について
仕事と家のあいだで、どちらも中途半端に見えてしまうような日ってありますよね。研究職に限らず、時間をかけないと成果が見えにくい仕事ほど、生活との折り合いがつかなくて、自分ばかり遅れているような感覚を抱きがちです。周りの何気ない一言に揺さぶられたり、家で支えてくれている相手に負い目を感じたり、そのたびに「自分の選び方は間違っているのか」と立ち止まってしまうこともあると思います。 この本が面白いのは、そんなモヤモヤに対して、大きな答えをくれるというより、「人はこんなふうに暮らしながら研究を続けている」という実態を丁寧に見せてくれるところです。床一面のミルクを前に、あえてビールを飲み切ってから拭く。その“余裕というより諦観に近い判断”に、生活を綱渡りでやっている人なら妙に共感できると思います。また、妊娠から数えると研究のペースが戻るまで6年かかったという話や、性別や環境によって求められる役割がまったく違う現実も、きれいごとなしで語られます。読みながら、自分が「できていない」のではなく、そもそも両立はこんなに時間のかかる営みなんだと少し視点が変わります。 特に、仕事を頑張れば頑張るほど家で支えてくれる相手が追いつめられていくという描写は、胸に刺さる人が多いはずです。誰かと比べて消耗しがちな人にこそ、静かに効いてくる本です。
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