
葉
太宰 治
小学館 / 2010-07-19
この本について
仕事や生活がうまく噛み合わないとき、「このまま引きずられて生きていくのかな」と、言葉にしづらい重さだけが残ることがあります。前向きになれと言われてもピンと来ないし、投げやりになるほど強くもない。そのあいだで立ち尽くしてしまう感じ、僕もよくあります。 太宰治の『葉』を読んでいると、その停滞に一枚ずつ薄い言葉が重なっていくような感覚があります。たとえば「夏まで生きていようと思った」というような、ぎりぎりの線で自分をつなぎとめる瞬間が淡々と書かれていて、立派な理由なんてなくても、人はとりあえず今日を生き延びたりするんだよな、と肩の力が少し抜けます。また、憂鬱に押しつぶされそうなときに、それでも生活の中のお茶の湯気にふっと自分の顔が映るだけで「どうにか、なる」と思えてしまう、その揺れ幅のリアルさが妙に沁みます。太宰自身も迷ったり、自分をいじらしく思ったり、そんな矛盾だらけの感情を、そのまま差し出してくれているように感じました。 この作品は、生きる理由を大仰に探している人よりも、理由なんて後回しでいいから、とりあえず今日を越えたい人に刺さる気がします。整った言葉より、書き損じの原稿を破り続けるような日々のほうが現実に近いと思える人には、特に静かに効いてきます。気合いを入れて読む本ではないですが、弱っているときほど、ページの端に残った体温みたいなものが頼りになる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの32%が集中しています。
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